Girl's Side 2nd Kiss

瑛がくれた誕生日プレゼントの話。遊園地デート。

チョーカー

     今朝の彼は「気に入ったんなら良かった」としか言わなかったけれど、それが彼なりの喜びと照れ隠しであることくらい、私もよく知っていた。
     誕生日プレゼントとして貰ったチョーカー。首元を飾るだけで、なんだかずっと背伸びをした気分になる。瑛くんがくれたものだというだけでも嬉しいのに、デザインまで洗練されていてセンスがいいのだから、私が気に入らないわけがなかった。

    「あれ?」

     なんとか開けたはずの金具のツメが、努力虚しく空を切る。すぐ指の先の出来事なはずなのに、自分から見えないというだけで、こんなにも難しくなるらしい。
     装飾品をつけたままジェットコースターに乗るのは危険だからと、一旦外して鞄にしまっておいたのはいいけれど。地上に戻ってきてつけなおそうとしたものの、感覚だけで装着するにはいささか問題があった。

    「ホラ、貸せよ。やってやるから」
    「お願いします……」

     もたもたしている私を見かねたのか、瑛くんにするりとチェーンを取り上げられた。
     背後の気配がぐっと近づく。思ったよりも近い、かも。
     自身がありそうな言い方をしていたけれど、瑛くんだってたぶん、そんなに器用なほうではない。私よりも手が大きいから、余計に苦戦しているんじゃないだろうか。首筋に触れるか触れないか、ギリギリの距離を掠める指先がくすぐったくて、なんだか自分たちがひどく恥ずかしいことをしているような気がした。

    「なあ」

     躊躇いがちに切り出された言葉の合間に、おっできた、と彼の声が弾む。それとほぼ同時に、首元の冷たさが重みを増した。

    「ありがとう、瑛くん」

     振り返っても、目は合わない。せっかく付け直してくれたんだから、もう一度、ちゃんと見て褒めてほしいのに。

    「……あの、さ」
    「なあに?」

     落とされた視線を覗き込めば、ふよふよと明後日の方向へと逃げていってしまった。

    「瑛くん?」

     どうしたって身長差があるから、手でガードされてしまうとこちらからは彼の表情がわからない。だから代わりにつんつんと腕をつついて、私は続きを催促した。

    「あー……その、それ、」
    「? チョーカーのこと?」
    「そう、それ。来るときはさ、留め具、誰にやってもらったんだよ」

     なんと。
     そんなこと気にしていたの、と意外に思ったけれど、それよりも、消え入るような声でそう言った瑛くんの耳の先がほんのり染まって、なんだかちょっと可愛かった。

    「ええと、お母さん、だよ?」

     彼は一瞬ぽかんとしたあと、はっと目を見開いてへなへなとその場にしゃがみ込んだ。たぶん、さっきまでとは違う方向性で照れている。誰か別の男の子だとでも思った? と追い打ちをかけるようにからかってみれば、彼の顔は膝に埋まってしまった。

    「今のなし、全部忘れろ」
    「えー、いやだよ」
    「おまえな……」

     ごめんね、いやだよ、絶対忘れない。嫉妬みたいで嬉しかったから。
     目線を合わせるように、彼の隣で私もしゃがんでみる。さっきよりもう一段階紅くなった耳に手を伸ばせば、触れる直前、ぱしりと手首を掴まれた。そのまま、するりと手を繋がれる。指まで絡められると、なんだか恋人同士の戯れみたいだ。

    「……なあ、他の奴にはやらせんなよ」
    「うん、わかってるよ」
    「にやにやすんな」
    「ごめんってば」

     ゆるく手を握り返しながら、空いたもう片方の指先でチョーカーの石をなぞる。今度のデートのときにも何か理由をつけて彼につけてもらおうと、私はちょっとだけずるいことを考えながら、瑛くんの復活を待つのだった。